
SES契約においても、エンジニアの残業が発生することがあります。特に、急な仕様変更やトラブル対応などによって、想定以上の労働時間が求められることも少なくありません。
本記事では、SES契約における残業の仕組み、残業が多くなる原因、その対策について解説します。
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SES契約における残業とは
残業自体はSES業界にも存在する
SES契約においても、エンジニアの残業は珍しくありません。ただし、SES企業に所属するエンジニアは、クライアント企業の直接の指示で残業を行うわけではなく、SES企業の管理責任者の指示のもとで業務を遂行します。SES企業の管理責任者が正式に指示を出さなければ、クライアント企業の要望であってもエンジニアが勝手に残業することはできません。
契約時間を超過してエンジニアが稼働する場合は追加費用が発生
SES契約では、月間の稼働時間が事前に決められており、一般的には140時間〜180時間のような精算幅が設定されています。しかし、以下のような要因で契約時間を超えることがあります。
- 追加要件の発生
- 納期が短いプロジェクト
- 予期せぬトラブル対応
これらの場合、SES企業はクライアント企業に対して追加費用を請求できるケースが多いです。契約時間を超過する場合は、クライアント企業との合意のもとで追加費用の発生を事前に確認しておくことが重要です。
SESにおける「精算幅」とは
精算幅とは、SES契約時に設定される月間勤務時間の範囲を指します。例えば、精算幅が140時間〜180時間で単価60万円の場合、エンジニアの稼働時間が140時間でも180時間でも、請求金額は60万円で変わりません。
この精算幅の範囲内であれば、追加の費用が発生しないため、クライアント企業とSES企業の双方にとってコスト管理がしやすい仕組みになっています。しかし、180時間を超えてエンジニアが作業をした場合、超過分に対して追加費用が発生します。
クライアント企業の追加費用とエンジニアの残業代が発生する条件は違う
エンジニアの残業代が発生する条件と、クライアント企業の追加費用が発生する条件は必ずしも一致しません。エンジニアはSES企業との契約に基づいて労働時間が決まります。
例えば、1日8時間労働の契約で常駐先の勤務時間が7時間だった場合、契約上の時間を満たすまでは残業にはなりません。
また、SES企業では「固定残業代」を採用していることが多く、固定残業時間を超えない限り追加の残業代は発生しません。
クライアント側の追加費用と、エンジニア個人の残業代発生の条件は異なるため、注意が必要です。エンジニアの労働時間管理を適切に行うことで、双方のトラブルを防ぐことができます。
SES契約の種類と残業のルール
SES契約には主に「準委任契約」「請負契約」「派遣契約」の3種類があり、それぞれ残業のルールが異なります。
準委任契約
SESで最も一般的な契約形態が準委任契約です。準委任契約では、エンジニアはクライアント企業に常駐して業務を遂行しますが、指揮命令権はSES企業側にあります。つまり、エンジニアの業務範囲や働き方を決定するのはSES企業であり、クライアント企業ではありません。
このため、エンジニアが残業を行う場合は、SES企業の管理責任者の指示が必要となります。クライアント企業の担当者から直接残業を求められたとしても、SES企業の許可なく残業を行うことは契約上問題となる可能性があります。そのため、SES営業担当者は、エンジニアがクライアント企業の指示でむやみに残業をしないよう、事前に注意喚起をしておくことが大切です。
請負契約
請負契約では、特定の成果物の完成を条件に報酬が支払われます。このため、業務遂行のプロセスにおいて時間管理は自由であり、成果物を納期までに納品できるかが最も重要となります。
しかし、納期が厳しい案件では、1日の作業時間が長引くことが多く、エンジニアが残業を行うケースがよく見られます。特に、仕様変更や追加作業が発生した場合、残業が常態化することもあります。そのため、請負契約においては、契約時に業務範囲や納期を明確にし、追加作業が発生した場合の対応策を事前に決めておくことが重要です。
派遣契約
派遣契約では、エンジニアはクライアント企業の指揮命令のもとで業務を行います。このため、勤務時間や残業の有無もクライアント企業の判断に委ねられることになります。
派遣契約では、労働基準法や労働派遣法に基づいたルールが適用され、クライアント企業が適切に労務管理を行う必要があります。残業が発生する場合も、クライアント企業が適切な手続きを踏み、法定の残業代を支払う義務があります。
SESで残業が多くなってしまう原因と対処法
急な要件追加や仕様変更
開発プロジェクトでは、途中で新しい機能の追加や仕様の変更が発生することが少なくありません。特に、クライアントのニーズの変化や市場環境の影響により、プロジェクトの途中で要件が見直されるケースがよくあります。このような急な要件追加や仕様変更が発生すると、開発のスケジュールが逼迫し、エンジニアの作業時間が増える原因になります。
対処法としては、契約時点で要件を明確にし、仕様変更が発生した際の対応について事前に取り決めをしておくことが重要です。また、仕様変更の影響範囲を最小限にとどめるようにクライアント企業と調整し、必要であれば納期を延ばしてもらう交渉も必要になります。
開発にはトラブルがつきもの
開発プロジェクトの現場では、想定外のバグやシステムの不具合が発生することが珍しくありません。特に、大規模なシステム開発や新しい技術を用いたプロジェクトでは、開発の途中で予期せぬトラブルが発生する可能性が高くなります。その結果、バグ修正や問題対応に時間を取られ、残業が発生してしまうことがあります。
このような事態を防ぐためには、プロジェクトの見積もり段階で、ある程度のトラブルが発生することを前提にスケジュールを組むことが重要です。予備の工数を確保し、トラブル対応の時間を考慮した計画を立てることで、残業のリスクを低減できます。
納期が短くスケジュールが厳しい
プロジェクトによっては、納期が非常に短く、タイトなスケジュールで進めなければならないケースもあります。このような場合は、最初の段階でクライアント企業としっかり交渉し、エンジニアの追加やスケジュールの調整が必要になります。
SESにおいて残業を発生させないためのポイント
要望を予めしっかりと確認し見積もりを正確に行う
クライアント企業との契約時には、要望を詳細に確認し、仕様変更や追加要件がなるべく発生しないよう、打ち合わせの時間を十分に確保し、正確な見積もりを行うことが重要です。
綿密なコミュニケーションで認識のズレをなくす
クライアント企業との間で細かい部分までしっかりと情報を共有し、曖昧な表現は避け、認識のズレをなくすことで、開発中のトラブルを防ぐことができます。
追加作業が発生した場合の対応を取り決めておく
契約の際に作業範囲を明確化し、追加作業が発生した際の対応方法を事前に決めておくことで、後々のトラブルを回避しつつ、対応もスムーズに進めることができます。
SESの残業は極力発生しないよう対策しておくことが求められる
SES契約においてエンジニアの残業は避けられないケースもありますが、事前にしっかりと要件を確認し、精度の高い見積もりを行うことで、余計な残業を減らすことが可能です。また、コミュニケーションを密に取り、契約内容を明確にすることで、無駄な作業を削減し、スムーズなプロジェクト進行を実現できます。契約の際は、エンジニアへ契約内容を周知することも忘れないようにしましょう。