
IT業界においてSES(システムエンジニアリングサービス)は欠かせない存在となっています。近年、企業のDX化やIT人材不足といった課題を背景に、SES企業の存在感はますます高まりを見せています。
本記事では、SES業界全体の将来性について解説します。また、将来性のあるSES企業にはどのような特徴があるのか、詳しく紹介します。
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SESに将来性はあるのか?
IT市場規模の拡大、企業のDX化やIT人材不足により、即戦力となるエンジニアを提供するSESは多くの企業から必要とされ、高い将来性が期待されています。
ITの市場規模は拡大している
矢野経済研究所が発表した「2024 国内企業のIT投資実態と予測」によると、国内のITサービス市場は今後も安定した成長が見込まれています。企業のIT投資は業種や規模を問わず拡大しており、デジタル基盤の整備はあらゆる産業で必須となりつつあります。
このような中、SESは即戦力となるITエンジニアを必要な期間だけ提供できる仕組みとして、多くの企業から注目を集めています。
DX化に伴ってさらに市場規模は拡大する
IPA(情報処理推進機構)が発行した「DX白書2023」では、「DXに取り組んでいる」と回答した企業が年々増加していると報告されています。また、総務省が発行した「令和6年度版 情報通信白書」によれば、大企業の約25%、中小企業の約70%がまだデジタル化に未着手であるという現状も指摘されています。
つまり、今後も多くの企業がDXを推進していく必要があり、それに伴いIT人材へのニーズは今後ますます高まっていくと考えられます。
IT人材は今後も不足していくと予想される
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。このような状況下では、企業が必要とするスキルを持った人材をタイムリーに確保することは一層困難になると見られています。
その中で、SESは必要なスキルを持ったエンジニアを柔軟に提供する手段として、今後も高い需要が期待されます。
SESの需要はなくならない?クライアント企業のメリット
近年、SESの導入を積極的に進めている企業が増加しています。その背景には、企業が抱える複数の課題をSESが効果的に解決してくれるという大きなメリットがあるからです。ここでは、クライアント企業にとってのSES活用の主なメリットについて詳しく解説します。
採用や教育コストが削減できる
新たにエンジニアを採用し、社内で教育・育成を行うには、多くの手間とコストがかかります。求人媒体への掲載費、採用担当者の工数、面接・選考プロセス、さらには入社後の研修やOJTなど、エンジニアを一人育てるためには相応のリソースを割く必要があります。
しかし、SESを活用することで、すでにスキルを持ったエンジニアを短期間でプロジェクトに投入することが可能になります。とくにITスキルが高度化・多様化している現代では、社内で必要な技術に適合する人材を育てるよりも、必要なタイミングで外部から調達する方が効率的であるケースが増えています。
さらに、社員の定着率が低い、あるいは中長期的にエンジニアが足りないといった課題を抱える企業にとっては、SESを通じて安定した技術リソースを確保することができるため、非常に有効な手段です。
プロジェクトにあわせて人員を調整できる
プロジェクトの特性やフェーズに応じて、必要なスキルや人数は変化します。例えば、要件定義や設計フェーズでは上流工程の人材が必要になりますが、開発フェーズに入ると多くのプログラマーが必要になります。さらにテストや保守運用フェーズでは、別のスキルセットが求められることもあります。
こうした変化に柔軟に対応できるのが、SESの大きな強みです。必要なスキルを持った人材を必要な期間だけ確保できるため、人員配置の無駄を最小限に抑えることができます。また、急な人員補充や追加要員の確保も迅速に対応できる点も、プロジェクトの進行にとって大きなメリットとなります。
さらに、社内リソースをプロジェクトに縛られずに運用できることで、企業の経営資源の最適化にもつながります。
エンジニア不足で人材の確保が難しい
日本では少子高齢化の影響もあり、慢性的なエンジニア不足が問題となっています。経済産業省の調査によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予想されており、多くの企業が人材確保に苦慮しています。
特に中小企業や地方企業は、大手IT企業に比べて人材獲得競争において不利な立場にあるため、優秀なエンジニアを自社で直接採用するのが難しい状況です。SESを活用することで、そうした企業でも高いスキルを持つ人材を確保し、事業推進のスピードを落とさずに済むという大きなメリットがあります。
また、SES企業が提供する人材は、多くの現場経験を積んだ「現場慣れした」エンジニアが多く、スムーズに業務に馴染みやすい点も魅力の一つです。
エンジニアにとってもSESのメリットが増えている
かつてのSES業界は、ブラックな労働環境やキャリアの不透明さといった問題が指摘されることもありました。しかし近年は、エンジニアにとっても魅力的な環境を提供する「ホワイトなSES企業」が増加しています。
労働時間の適正管理、キャリア支援、スキルアップ支援など、企業がエンジニアに長く活躍してもらうための取り組みが進んでおり、SESという働き方に対するイメージも変化しつつあります。
未経験からエンジニアを育てる教育体制
IT人材の不足を受けて、未経験者を育成し一人前のエンジニアに育て上げる教育体制を整えているSES企業も多く存在します。たとえば、以下のような取り組みが一般的です。
- オンライン学習制度
- JavaやPythonなど言語別の研修
- ビジネスマナー研修やチーム開発体験
- 現場配属後のフォローアップ研修
- 定期的な技術勉強会や資格取得支援
これらのサポートにより、エンジニア未経験の人材でも安心してスタートを切ることができ、実務を通して段階的にスキルアップしていくことが可能です。
さまざまな現場に関わることができる
SESの大きな特徴として、さまざまな業種・業界・フェーズのプロジェクトに関われるという点が挙げられます。金融系、製造業、物流、小売、官公庁など、幅広い分野の案件に携わることができ、開発・インフラ・運用保守・上流工程など多様な業務経験を積むことができます。
特定の業界や技術に偏らずにキャリアを形成できるため、自分の強みや興味を発見しやすく、将来のキャリアパスを描きやすくなるという利点もあります。
また、複数の現場を経験する中で、技術力だけでなく、チームワーク、コミュニケーション能力、マネジメント能力なども自然と養われていきます。こうしたスキルは、後にPL(プロジェクトリーダー)やPM(プロジェクトマネージャー)といった上位職種へのキャリアアップにもつながります。
将来性のあるSES企業の特徴
SES業界は企業ごとの差が大きく、「将来性のある企業」と「将来性のない企業」で明暗が分かれています。ここでは、将来性が高く、エンジニアからもクライアント企業からも選ばれるSES企業が持つ特徴を詳しく解説します。
上流工程の案件が多い
将来性のあるSES企業は、単なる開発業務だけでなく、「上流工程」と呼ばれる要件定義・基本設計・顧客折衝などのプロセスに関わる案件を多く持っています。上流工程は、プロジェクト全体の方向性を決める重要なフェーズであり、ITエンジニアにとって高いスキルと経験が求められます。
そのため、上流工程に関われるということは、次のような大きなメリットがあります。
- 年収が高くなりやすい
上流工程のスキルを持つ人材は市場価値が高く、企業からの評価も上がる傾向にあります。 - キャリアの幅が広がる
PL(プロジェクトリーダー)やPM(プロジェクトマネージャー)といった上位職種にステップアップしやすくなります。 - クライアントとの信頼関係を構築できる
直接顧客と対話する機会が増えるため、ITコンサルタントとしてのキャリア形成にもつながります。
このように、上流工程の案件を数多く保有するSES企業は、エンジニアにとっても将来の成長を見据えて選ぶ価値のある職場です。
研修・教育制度が充実している
優れたSES企業は、人材の育成に力を入れており、体系的な研修・教育制度を整備しています。とくに未経験者や若手エンジニアに対して、以下のような支援体制を持つ企業が増えています。
- 入社時の基礎研修(HTML/CSS、Java、SQLなど)
- 現場配属前の模擬プロジェクトによる実践的学習
- 現場でのOJTや、スキルチェックを含めたフォロー体制
- 資格取得支援制度(例:基本情報技術者、応用情報技術者、AWS認定など)
- eラーニングや外部講習の受講補助
こうした制度が整っていることで、エンジニアは着実にスキルアップでき、長期的なキャリア形成が可能になります。また、教育に投資している企業は離職率も低く、エンジニアが安心して働き続けられる環境であるといえます。
評価制度が整っている
評価制度が明確で、かつ公平に運用されていることも、将来性のあるSES企業の大きな特徴です。曖昧な評価ではなく、「何を達成すれば昇給・昇格できるのか」が明文化されている企業では、エンジニアのモチベーション維持・向上につながります。
たとえば以下のような取り組みが見られます。
- 職能別・等級別の評価基準の整備
- 定期的な目標設定とフィードバックの実施
- 技術スキルだけでなく、対人能力やマネジメント力も評価対象
- 自己評価・上司評価・クライアント評価の多面評価制度
このような透明性のある評価体制は、エンジニアにとって「この会社で努力すれば報われる」という安心感をもたらします。その結果、エンジニアの定着率も向上し、企業としても安定した人材基盤を築くことができます。
SES事業以外の事業もある
将来性のあるSES企業は、SES事業だけに依存していないという特徴があります。具体的には、以下のような事業を並行して展開している企業が多いです。
- 自社受託開発(自社でシステム開発を請け負う)
- 自社サービスの開発・運営(SaaS型プロダクト、Webサービスなど)
- 技術コンサルティング事業(クライアントのDX推進支援など)
こうした事業展開により、収益源を多角化できるため、景気や案件状況に左右されにくい安定した経営基盤を築くことができます。また、エンジニアにとっても、SES以外のキャリアパス(例:プロダクト開発、社内SE、コンサルタントなど)が選択できるメリットがあります。
さらに、受託開発や自社サービスに関わることによって、SESでは得られない「全工程に関わる経験」や「サービスの改善・成長に携わる楽しさ」を味わえる点も魅力の一つです。
将来性のないSES企業の特徴
一方で、すべてのSES企業が将来性に優れているわけではありません。以下のような特徴を持つ企業は、エンジニアの成長を阻害し、離職率も高くなる傾向があります。
下請け過ぎる
多重下請け構造の末端でしか業務を受けていないSES企業は、クライアントからの評価も低く、単価が安いためエンジニアの給与も低くなりがちです。業務内容も単純作業に偏りがちで、スキルアップの機会も限られます。
エンジニアと無関係の仕事が多い
一部のSES企業では、家電量販店での販売やコールセンター業務など、エンジニアリングとは無関係な仕事をさせられるケースもあります。これは本来のキャリア形成にはつながらず、モチベーションの低下を招きかねません。
待機期間中の給与が満額でない
案件が決まらない待機期間中に給与を全額支給しないSES企業も存在します。このような企業は人材管理に課題があり、エンジニアが安心して長く働くことができません。
将来性の高いSES企業は多い
SES業界は、IT市場の拡大やDXの推進、IT人材不足といった社会的背景の中で、今後も需要が高まっていく分野です。
その中でも、上流工程の案件が多いこと、教育体制が整っていること、公正な評価制度があること、SES以外の事業も展開していることなどを備えた企業は、より将来性が高いといえるでしょう。