SES（システムエンジニアリングサービス）業界で営業活動を行う上で、「商流」という言葉は避けて通れません。商流とは、エンジニアが実際の現場で働くまでの契約における人やお金の流れを指し、営業担当者にとっては商談の場面で頻繁に出てくる重要な概念です。
しかし、商流の仕組みをしっかり理解していないと、クライアントとの信頼関係を築けなかったり、不利な契約条件を見逃してしまったりするリスクがあります。商流の深さによって案件内容や条件が大きく変わることを理解しておく必要があります。プライム案件から2次請、3次請といった商流の段階によって、エンジニアの待遇や責任範囲、営業の立ち回り方も異なってくるからです。
本記事では、SES業界における商流の基本的な仕組みや、「商流が深い場合」と「プライム案件」の違いを解説します。
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SES業界の商流とは
SES業界における商流とは、エンジニアが現場で働くまでの契約上の人やお金の流れを指します。現場で「このエンジニアの商流は？」と聞かれた際には、どの会社を通じてエンジニアが紹介されているのかを答える必要があります。たとえば、「〇社先のエンジニア」といった具合です。
また、商流に関する契約条件として「商流制限」が設定されることがあります。「御社1社先まで」といった制限がかかると、取引先を増やす際にも注意が必要です。この制限に違反すると契約トラブルに発展する恐れがあります。
SES業界における「商流が深い」とは
SES業界では、発注企業からエンジニアが現場で働くまでに複数の企業が介在します。この過程で、プライム案件（1次請け）から2次請け、3次請けへと進むにつれて商流が深くなります。
SES業界はなぜ商流が深くなるのか
SES業界では、案件に必要なエンジニアの調達が難航することがあります。そのため、SES企業が協力してエンジニアを探す過程で、複数の仲介会社が介在し、結果として商流が深くなります。
特に、特定のスキルを持つエンジニアが不足している場合、商流が深まる傾向があります。そのため、エンジニア調達力の向上と同時に、商流の深浅についても考慮しながら営業活動を行うことが重要です。
商流が深いデメリット
商流が深い案件より浅い案件の方がメリットが大きいと考える企業が多いでしょう。では、商流が深くなることにはどのようなデメリットがあるのか見ていきます。
中抜きの影響でエンジニアの給料が上がりにくい
商流が深いということは、発注元からエンジニアに至るまでに多くの仲介企業が存在することを意味します。
各仲介企業は、自社の利益を確保するために、契約金額から一定のマージンを取ります。この”中抜き”が繰り返されることで、最終的にエンジニアに渡る報酬が少なくなってしまいます。その結果、優秀なエンジニアでも十分な報酬を得られないケースが多く、業界全体のモチベーション低下につながるリスクがあります。
企業としては、中抜きを最小限に抑え、エンジニアにより高い報酬を提供する工夫が必要です。例えば、商流を浅くするために、直接契約できる取引先を開拓するなどの対策が考えられます。
モチベーションが上がりにくい
商流が深いと、エンジニアがクライアントと直接コミュニケーションを取る機会が少なくなり、現場での意思決定に参加することも難しくなります。
その結果、エンジニアは上流から流れてくる仕事を単にこなすだけの状況に陥りやすくなります。このような環境では、仕事に対する責任感や達成感が薄れ、モチベーションが低下する原因となります。
さらに、クライアントの要望が直接エンジニアに伝わらず、仲介企業を通じて伝達されるため、コミュニケーションエラーも起こりやすくなります。
商流が深い場合、エンジニアはクライアントとの直接的な打ち合わせがなく、上流から流されてきた仕事をこなすだけになりがちです。このような状況では、エンジニアが仕事の意義を見出しにくく、モチベーションが低下することがあります。
エンジニアのモチベーションを保つためには、商流が深くても適切なフィードバックやコミュニケーションを取ることが大切です。
「商流飛ばし」とは
「商流飛ばし」とは、仲介業者を排除して、発注企業から直接仕事を受注することを指します。商流を飛ばすことで高い金額で受注することが可能になりますが、業界内での信用を失うリスクが伴います。
商流飛ばしを行うと、取引停止や損害賠償請求といった厳しいペナルティが科されることがあります。営業担当者は、短期的な利益を追求するのではなく、長期的な信頼関係を築くことを優先すべきです。
SES業界における「プライム案件」とは
SES業界における「プライム案件」とは、発注企業から直接受注した案件のことを指します。商流が浅く、利益率が高いため、多くのSES企業がプライム案件の獲得を目指しています。
プライム案件のメリット
利益率が高くエンジニアの給料が上がりやすい
商流が短くなることで、中抜きが発生しないため、SES企業はより高い利益を確保できます。その結果、エンジニアに対しても高い報酬を提供しやすくなり、優秀な人材を確保する競争力が向上します。
また、利益率が高いことで、SES企業はエンジニアの教育や福利厚生に投資する余裕が生まれ、長期的な視点で人材育成に取り組むことが可能になります。これにより、エンジニアのモチベーション向上や離職率の低下といった効果も期待できます。
チーム体制で仕事ができる
プライム案件では、自社から複数名の人員を送り込むことができるため、チーム体制で仕事を進めることが可能です。このチーム体制のメリットは、エンジニアが互いにサポートし合いながら業務を進められる点です。
大規模プロジェクトでも、チームとして協力することでスムーズに進行させることができます。また、SES企業としても、複数名のエンジニアをまとめて送り込むことで、プロジェクトの進行状況を把握しやすくなり、リスク管理も効果的に行えます。
さらに、クライアント企業との直接的なコミュニケーションが可能になるため、エンジニアの仕事に対する理解が深まり、業務の質が向上します。これにより、エンジニアのスキルアップやキャリア形成にも良い影響を与えます。
プライム案件のデメリット
責任が重くなる
クライアント企業との直接契約の場合、プロジェクトの遅延や成果物の不具合が発生した際には、その責任を負うことになります。そのため、エンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャーや営業担当者も、プロジェクトの進行状況をしっかりと把握し、クライアントとの密な連携が求められます。
また、責任が重くなることで、SES企業のリスクも高まります。不具合やトラブルが発生した場合には、追加のコストや対応時間が必要になるため、事前のリスク管理が重要です。
一方で、責任を果たすことでクライアント企業との信頼関係が強化され、長期的な取引につながるケースもあります。そのため、リスク管理の体制を整え、プロジェクトの成功に向けて積極的に取り組む姿勢が求められます。
SES業界の商流を理解して営業活動に活かそう
SES業界における商流の仕組みを理解することで、営業担当者はより効果的な営業活動を行えるようになります。商流は浅い方がメリットが多く、直接契約できる取引先を開拓するなど、適切に営業戦略を立てることが重要です。
SES業界の商流をしっかり理解し、エンジニアの適切なマッチングと自社の利益向上を目指しましょう。
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