
近年、企業のITニーズが高まる中で、SES(システムエンジニアリングサービス)市場が拡大しています。SES企業が優秀なエンジニアを確保し、企業に売り込んでいくためには、適切な単価設定が欠かせません。エンジニアに魅力的な条件を提示しつつ、企業との契約をスムーズに進めるためには、単価相場を正しく理解し、戦略的に活用することが重要です。
本記事では、SESの単価相場、エンジニアへの還元率、単価交渉のコツについて詳しく解説します。
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SESとは?
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアやIT技術者が契約に基づいて客先企業のプロジェクトや業務に従事する形態のことです。企業はSESを利用することで特定のプロジェクトや業務に必要な技術やスキルを持つエンジニアを短期的に確保することができます。
SES業界が盛り上がりを見せる背景
近年、SES業界は大きな成長を遂げています。その背景には、ITエンジニアの働き方や企業の人材確保のニーズの変化があります。
① フリーランスエンジニアの増加
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、リモートワークが普及し、多くのITエンジニアがフリーランスとして独立する動きが加速しました。企業に所属せず、プロジェクト単位で案件を選びながら働くスタイルが広がり、SESを介して案件を探すフリーランスエンジニアが増えています。
② 企業の即戦力エンジニアへの需要増
IT市場の拡大に伴い、多くの企業がエンジニアの確保を急務としています。しかし、優秀なエンジニアを正社員として採用するのは容易ではなく、採用コストや育成コストが課題となっています。そこで、即戦力となるエンジニアを必要な期間だけ活用できるSESの需要が高まっています。
③ SES企業の増加とサービスの多様化
SES業界の成長に伴い、大手企業から中小企業まで多くのSES企業が市場に参入しています。SES企業ごとに異なる強みを持ち、特定の技術領域に特化したサービスや、エンジニアの教育・キャリア支援を充実させた企業など、さまざまな形態で事業を展開しています。これにより、企業のニーズに応じた柔軟な形でエンジニアを提供することが可能になっています。
SESの単価相場はいくら?
SESの単価はエンジニアのスキルや経験、契約内容、職種によって大きく異なります。
一般的な単価相場は以下の通りです。
フリーランスプログラマー
- 要件定義や設計書に基づき、機能を実装
- 会社による中抜きがないため、比較的安価
- 相場:40万~80万円
大手企業プログラマー
- 企業内で研修や教育を受けたエンジニアが多い
- フリーランスよりも2~3割単価が高い傾向
- 相場:60万~100万円
初級システムエンジニア(SE)
- 簡単なシステム設計、開発を担当できる
- 相場:80万~100万円
中級システムエンジニア(SE)
- 5年以上の経験があり、中規模以上のシステム設計が可能
- 相場:100万~120万円
上級システムエンジニア(SE)
- 大規模案件のプロジェクトマネジメント経験など高度なスキルを保有
- 相場:100万~200万円
SESの単価はどうやって決まる?
SESの単価は、クライアント企業とSES企業の契約交渉によって決まります。しかし、単価を適切に設定しなければ、エンジニアの確保が難しくなったり、利益率が低下したりする可能性があります。そのため、SES企業はエンジニアの市場価値を正しく把握し、適正な単価を設定することが重要です。
SESの単価の算出基準
SESの単価は、主にエンジニアのスキルや経験、SES企業の規模などの要素によって決まります。
エンジニアの経験やスキル
エンジニアの経験年数やスキルセットは、単価を決める重要な要素です。例えば、10年以上の経験を持ち、高度なAI・機械学習の知識を備えたエンジニアは、一般的に高単価になります。
実務経験が浅いエンジニアと高いスキルを持つエンジニアでは、単価に2〜5倍の差が出ることもあります。
適正な単価を設定しなければ、優秀なエンジニアの流出につながる可能性があるため、SES企業は市場の動向を見極めながら適切な価格をつけることが求められます。
SES企業の規模
SES企業の規模も単価に影響を与える要因の一つです。大手SES企業は、多くのエンジニアを抱えており、豊富な実績やブランド力を活かして比較的高い単価で契約を結ぶことができます。
一方、中小SES企業は柔軟な対応が可能で、クライアントの予算に合わせた提案がしやすい反面、単価がやや抑えられる傾向があります。一般的に、大手SES企業の単価は中小SES企業より20〜30%高いとされています。
SESの単価交渉のポイント
適切な単価で優秀なエンジニアを確保するためには、単に希望する金額を提示するだけではなく、市場の状況やプロジェクトの要件を踏まえた交渉が必要です。特に、以下のポイントを押さえておくことで、クライアント企業との交渉をスムーズに進めることができます。
1. 単価相場を理解する
市場価格を把握していなければ、適正な単価を設定することは難しくなります。そのため、エンジニアのスキルをよく理解したうえで過去の取引履歴や業界の動向を分析し、現在の相場を割り出すことが重要です。
- これまでの案件の単価データを蓄積し、平均的な価格帯を把握する
- インターネット上で公開されているSES市場のレポートやフリーランスエンジニア向けの単価情報を参考にする
- SES業界に詳しい専門家や他社の担当者からヒアリングを行い、リアルな市場感をつかむ
相場を知ることで、過剰な値下げ交渉を回避し、エンジニアの価値に見合った単価で契約を結ぶことが可能になります。
2. 予算を明確にする
クライアント企業との交渉を円滑に進めるためには、事前に社内で予算を明確にしておくことが重要です。
- どの程度のコストをかけられるのかを社内で整理し、必要に応じて調整できる範囲を決めておく
- 予算内で求めるスキルセットを確保できるかどうかを事前に検討し、必要であればエンジニアとも相談しながら調整する
予算の明確化により、単価交渉がスムーズになり、不要な価格の上振れや過度なコスト削減による品質低下を防ぐことができます。
SESの給与への還元率
SESエンジニアへの還元率とは、クライアント企業から支払われる契約単価のうち、エンジニアの給与として還元される割合を指します。業界の一般的な還元率は40〜80%で、70%以上であれば高還元率とされます。
SES営業として知っておくべき点は、エンジニアから「より高い還元率」を求められることがあるということです。エンジニアにとっては、自分のスキルや経験に見合った報酬を受け取れるかが重要なため、還元率が低い場合には不満を持たれることもあります。
ただし、単純に還元率が高いからといって、必ずしも良いSES企業とは限りません。SES営業担当者は、エンジニアに還元率の仕組みを適切に説明し、単価交渉の際にも納得してもらえるよう準備しておくことが大切です。
還元率が高くても注意すべき点
SES企業が得るマージンには、以下のような経費が含まれています。
- オフィスの賃借料(SES企業の拠点維持に必要なコスト)
- 社会保険料(エンジニアの厚生年金や健康保険の負担分)
- 福利厚生費(退職金制度や研修制度、資格取得支援などの費用)
- 労働環境改善費用(労務管理システムの導入や教育、カウンセリング制度の整備など)
- 新規事業立ち上げ費用(新たな事業の展開や拠点の開設にかかるコスト)
仮に還元率が高すぎる場合、これらの費用を十分に確保できておらず、企業の財務基盤が不安定になっている可能性があります。結果として、エンジニアへのサポートが手薄になり、労働環境の悪化や将来的なリスクにつながることも考えられます。
そのため、SES企業を評価する際は、還元率だけでなく、自社の福利厚生の充実度や企業の経営状況、エンジニアへのサポート体制なども総合的に判断することが重要です。
適切なSES単価相場の把握と提示がSES営業の鍵
SESの単価相場は、エンジニアのスキルや経験、SES企業の規模、案件の内容によって大きく変動します。適切な単価を設定し、クライアントに納得してもらうためには、市場相場を把握し、エンジニアのスキルやプロジェクト要件を的確に評価することが重要です。
また、SES企業がどのようにマージンを設定し、エンジニアに還元しているかも考慮する必要があります。適正な還元率を維持しつつ、営業担当者がクライアントとエンジニア双方にとって納得のいく単価を提示できるようにすることが、SES営業の成功につながります。
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