
SES(システムエンジニアリングサービス)事業は、IT業界の成長とともに拡大を続けています。企業のデジタル化が加速し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められる中、SES市場も大きな影響を受けています。
本記事では、SES市場の規模や将来性について解説し、今後の成長が期待される分野や、人材確保・業務効率化の必要性について考察します。
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SES事業の市場規模
矢野経済研究所の「2024 国内企業のIT投資実態と予測」によると、国内民間企業のIT市場規模は以下のように推移すると予測されています。
- 2023年度:15兆500億円
- 2024年度:15兆8,900億円
- 2025年度:16兆6,800億円
- 2026年度:17兆1,000億円
IT市場の拡大に伴い、SES事業の市場規模も比例して成長すると考えられます。企業のIT投資が増える中で、SES企業が提供するエンジニアリソースの需要も増大し、安定した市場成長が見込まれます。
SES市場の将来性
大規模開発におけるSESの需要
SES契約は、大手企業や官公庁が大規模なシステム開発プロジェクトを進める際に利用されることが多いです。特に、金融機関、医療、公共インフラなどの分野では、安定したSESの需要が継続しています。
システムの規模が大きくなるほど、開発期間が長期化し、専門的な技術を持つエンジニアの確保が不可欠となります。そのため、SES企業の提供する即戦力のエンジニアが重宝される傾向にあり、今後もSES契約の需要は拡大していくと考えられます。
DX化に伴うさらなる需要の拡大
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増え、IT業界へのニーズが高まっています。しかし、多くの企業はDXの必要性を認識しつつも、社内に適切なIT人材が不足しているため、実際の取り組みが遅れているのが現状です。これらの企業が本格的にDX化に取り組むことで、IT需要がさらに増すことになります。IT人材も外部に求めることになり、SES企業が提供するエンジニアの活躍が期待されます。
また、DXの進展に伴い、新たなシステム導入や業務プロセスの自動化が求められるケースも増えています。クラウドシステムやAIを活用した業務効率化ツールの開発・導入を支援するSES企業の役割は、今後さらに拡大していくでしょう。
小規模開発は減少する可能性がある
近年、クラウドサービスやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の普及により、企業のIT環境は大きく変化しています。特に、小規模な業務システム開発や、単純なプログラム作成のニーズは減少しつつあります。クラウドプラットフォームを活用することで、企業はコストを抑えながらシステムを導入できるようになったため、従来のSES契約を通じた小規模開発の需要は縮小する可能性があります。
しかし、クラウドシステムの導入支援や、既存システムとの統合、維持管理といった領域では、引き続きSESの需要が見込まれます。特に、複雑なシステムの運用・保守やカスタマイズが求められる場合、SESエンジニアの専門的な知識が必要とされるでしょう。
エンジニアの人手不足
IT市場の拡大に対して、エンジニアの数は依然として不足しています。日本国内では少子高齢化が進んでおり、労働力人口の減少が避けられない状況です。さらに、IT技術は急速に進化しており、エンジニアには最新技術の習得が求められます。これにより、企業が必要とするスキルを持つエンジニアの確保がより困難になっています。
この課題に対応するため、SES企業は労働環境の改善や、報酬体系の見直しを進める必要があります。例えば、リモートワークの導入やスキルアップ支援を強化することで、エンジニアが長期的に活躍できる環境を整えることが求められます。
フリーランスとの協業が増加
IT技術の多様化に伴い、特定の技術領域に強みを持つフリーランスエンジニアの活用が進んでいます。企業の開発プロジェクトはますます複雑化しており、単独のSES企業や自社エンジニアだけでは対応しきれないケースが増えています。
このため、多くのSES企業がフリーランスエンジニアとの協業を進め、プロジェクトごとに最適な技術者を確保する動きを強めています。特に、ブロックチェーン、AI、IoTなどの先端技術を扱うプロジェクトでは、高度なスキルが求められるケースが多く、SES企業の戦略としても重要な要素となっています。
IT業界において成長が期待される分野
AI・ビッグデータ
AI(人工知能)は、業務の自動化やデータ分析の高度化を推進し、さまざまな業界で活用されています。特に、AIの機械学習技術は膨大なデータ(ビッグデータ)を活用することで、より高度な予測や意思決定を可能にしています。
業務効率化の促進
AIによる自動化技術(RPAやチャットボットなど)を活用することで、ルーチンワークを削減し、業務の生産性を向上させることが可能です。
データ活用によるビジネスの最適化
企業はビッグデータをAIに学習させることで、マーケティングの最適化や、需要予測の精度向上を実現できます。
AIの高度化
AIの学習データが増えることで、精度の高い画像認識や自然言語処理が可能になり、医療診断や金融分析などの分野でもAIの活用が進んでいます。
このように、AIとビッグデータの融合は企業の競争力を高める要因となっており、SES市場においてもAI関連プロジェクトの増加が期待されます。
クラウド
クラウド技術は、企業のITインフラの柔軟性を向上させ、業務効率化やコスト削減を可能にします。
クラウドサービスの種類
- SaaS(Software as a Service):Google WorkspaceやMicrosoft 365のような、オンラインで利用できるアプリケーションサービス。
- PaaS(Platform as a Service):アプリケーション開発環境を提供するサービス(例:AWS Lambda、Google Cloud Functions)。
- IaaS(Infrastructure as a Service):仮想サーバーやネットワークを提供するサービス(例:AWS EC2、Azure Virtual Machines)。
クラウドのメリット
- 初期コストを抑えつつ、必要な分だけリソースを利用できるため、拡張性が高い。
- 物理的なサーバー管理が不要になり、システム運用の負担が軽減される。
- テレワーク環境の整備が容易になり、企業の働き方改革にも貢献。
今後もクラウド市場は成長を続け、SES企業にとってもクラウド技術に精通したエンジニアの需要が高まることが予想されます。
DX
デジタル技術の進化に伴い、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。
DXの主な目的
- 業務プロセスの効率化(ペーパーレス化、業務の自動化)
- 新しいビジネスモデルの創出(デジタルサービスの提供)
- 顧客体験の向上(データ活用によるパーソナライズ)
政府のDX推進政策
- 日本政府はデジタル庁を設立し、行政サービスのデジタル化を推進。
- 企業に対してもDXの導入を促進するための補助金制度を整備。
DXの推進により、企業のIT投資が増加し、SES企業の役割も大きくなっています。特に、企業がDXを進める際には、クラウド導入やAI活用などの専門的な技術が必要となり、SESの需要が高まると考えられます。
サイバーセキュリティ
デジタル化が進むにつれ、サイバー攻撃の脅威も増大しています。特にランサムウェア攻撃やフィッシング詐欺などのサイバー犯罪が増加しており、企業の情報資産を守るためのセキュリティ対策が急務となっています。
サイバー攻撃の増加
- 企業や官公庁を標的とした大規模なデータ漏洩事件が発生。
- IoTデバイスの普及により、ネットワークを通じた攻撃リスクが増大。
法規制の強化
- 個人情報保護法の改正により、企業のデータ管理責任が厳格化。
- EUのGDPR(一般データ保護規則)など、国際的なデータ保護基準への対応が求められる。
これに伴い、企業はセキュリティ対策を強化するために専門知識を持つエンジニアの確保を進めています。SES市場においても、サイバーセキュリティ分野のSES案件が増加しており、セキュリティ専門のSESエンジニアの需要は今後ますます拡大すると予想されます。
市場が拡大していく中で、人材確保や業務効率化への取り組みが求められる
SES市場は、IT市場全体の成長に伴い拡大を続けています。特に、大規模開発プロジェクトやDX推進により、SESの需要は今後も増加する見込みです。一方で、エンジニアの人材不足や小規模開発の減少といった課題にも直面しています。SES企業は、フリーランスとの協業や労働環境の改善を進めることで、持続可能な成長を実現することが求められます。市場の変化に柔軟に対応し、企業のIT投資のニーズに応えることで、SES事業のさらなる発展が期待されます。