
営業人材がなかなか育たないという悩みをもつSES営業の部門責任者やマネージャーは多いのではないでしょうか。しかし、どのように何を変えればいいのかわからないという方もいるでしょう。
現在、採用難の時代が続いており、経験者採用は難しくなっている中、自社で営業人材を育成することはますます重要になっています。しかし、営業育成のノウハウを持たない企業も多く、属人的な営業育成スタイルが主流になりがちです。そこで本記事では、営業の育成において効果的な手法やポイントを具体的に解説します。
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営業人材育成の難易度が上がっている背景とは
製品やサービスの差を打ち出すのが難しい
SES業界においても、エンジニアのスキルや単価だけでなく、自社の特色を打ち出すのが難しくなっています。技術者不足の中、競争が激化しており、クライアント側でも多くのSES企業を比較検討できる環境になってきています。そのため、単に案件を獲得するだけの営業ではなく、「クライアントの課題解決型の提案」がより強く求められています。
リモートワークやハイブリッドワークの普及
近年、リモートワークやハイブリッドワークが一般化したことで、営業組織内の情報共有が難しくなっています。以前であれば、「現場で学ぶ機会」が多くありました。しかし、リモートワークの普及により、これらの機会が減少。特に、営業はクライアントと接することでニーズを正確に把握していかなければなりませんが、若手営業がそういったノウハウを学ぶ環境が減ってしまっているという課題が生じています。
人材の流入と流出が激しくなった
一昔前と比べると転職サービスが増え転職がしやすくなり、人材の流動性が高まりました。
その結果、人材の出入りが激しくなり、既存の営業ノウハウが引き継がれず属人的な営業スタイルが続いてしまったり、マネージャーが新人の育成に時間を割けずチームの営業力が低下してしまうなど、組織が疲弊してしまうケースも増えています。
営業人材を育成する方法
営業ロープレ
営業ロールプレイング(営業ロープレ)は、実際の営業シーンを疑似体験することで営業スキルを磨く手法です。例えば、クライアントに対して技術者のスキルやプロジェクトへの適合性を説明するシナリオを想定し、実践的なトークをするなど、顧客役と営業役に分かれて商談を行い、フィードバックを受けながらスキルを向上させます。また、顧客側を演じることで、購買行動の理解を深め、提案力を強化できます。
OJT(On-The-Job Training)
OJTは、実際の業務を通じて営業スキルを学ぶ手法です。経験豊富な営業担当者がトレーナーとなり、新人に直接指導を行います。SES営業においては、営業担当者がクライアントとエンジニアの双方の要望を調整するスキルが必要となり、それは現場経験を通じて身につく部分が多いでしょう。そういった経験を得るためにはOJTはとても有効な育成方法といえます。
ただし、指導者によって教育の質にばらつきが出やすいため、標準化された教育プロセスの導入が望ましいです。
OFF-JT(Off-The-Job Training)
OFF-JTは、座学や研修を通じて体系的な知識を学ぶ方法です。集合研修やオンライン講座を活用し、標準化された営業スキルを習得できます。ただし、OFF-JTでは実務経験が伴わないため、OJTと組み合わせて実施することが望ましいでしょう。
営業人材を育成する上で重要なポイント
営業活動の標準化
営業の成果を安定させるためには、トップセールスの成功パターンを可視化し、組織全体で共有することが重要です。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
- 成功している営業担当の商談内容を分析し、トークスクリプトを作成
→ クライアントとの初回接触からクロージングまでの流れや手順を標準化 - 案件ごとの対応フローをマニュアル化
→ 例:「ヒアリングシートを作成」「エンジニアの希望を事前にまとめておく」 - マッチングツールを活用し、エンジニアと案件の最適な組み合わせを提案
→人手による属人的なアサインではなく、データに基づいた客観的な提案が可能に
これにより、営業の経験値に依存せず、組織全体で安定したレベルの提案ができる体制が整います。
職場環境を整える
営業人材のモチベーションを高め、定着率を向上させるには、公平で明確な評価制度と、相談しやすい職場環境を整えることが不可欠です。
売上だけでなく、以下のような指標を評価に含めることで、より質の高い営業活動を促進できます。
- クライアントのリピート率
- エンジニアの契約継続率
- クライアントからのフィードバック
- 社内での情報共有や育成への貢献度
また、営業職は個人プレーになりがちですが、「困ったときに気軽に相談できる環境」を作ることで、不安や課題を早期に解決できるようになります。
外部の研修やサービスを活用する
自社に十分な育成ノウハウがない場合、外部の研修サービスを活用するのも有効です。営業スキル向上に特化した研修を導入することで、短期間で効果的な成果を期待できます。
また、オンライン講座やeラーニングを活用し、いつでも学習できる環境を整えるのも効果的です。
新人に起きやすいミスを理解する
新人営業は、経験不足から特定のパターンのミスをしがちです。これらの課題を事前に把握し、具体的な解決策を提示することで、スムーズな成長を促すことができます。
失敗の具体例 | 解決策 |
---|---|
何も準備せずに商談し、質問に答えられない | ヒアリングシートを作成し、想定問答を用意 |
商談に不安を感じ、積極的に動けない | ロールプレイングを実施し、自信をつける |
表面的なニーズだけを聞いてしまう | ヒアリングのフレームワークを活用 (例:「なぜ」を5回繰り返すなど) |
クライアントの要求を優先して、エンジニアの意向を無視 | エンジニアとの面談を定期的に実施し、希望を正確に把握 |
営業人材の育成計画の立て方
営業人材を効果的に育成するためには、目標の明確化、現状分析、営業プロセスの最適化、必要なスキルの明確化、育成プロセスの設計というステップを踏むことが重要です。それぞれのステップについて、詳しく解説します。
1. 目標を設定する
まずは、営業人材がどのような成果を達成すべきかを明確にすることが重要です。
- 数値目標の設定
- 例:○ヶ月以内に○件の新規案件を獲得
- 例:売上○○万円以上を達成
- スキル面の目標
- 例:1年以内にクライアントとの商談を独力で進められるようになる
- 例:SES業界の基礎知識を身につけ、エンジニアとの円滑なコミュニケーションができるようにする
2. 現状の分析と課題の洗い出し
設定した目標に対して、現在の営業人材のスキルや成績を分析し、どの部分を強化するべきかを明確にする必要があります。
- 現状のスキルレベルをチェック
- 商談の進め方、ヒアリング能力、交渉力、エンジニアとの連携力などを評価
- 売上や成約率のデータをもとに強み・弱みを分析
- ギャップを明確化し、優先すべき課題を特定
- 例:「ヒアリングはできているが、提案力が不足している」
- 例:「エンジニアとの関係構築が苦手で、マッチングの精度が低い」
3. 課題を営業プロセスに当てはめる
営業プロセス全体の流れを考え、現状の課題がどのフェーズで発生しているのかを特定します。
- 成功している営業担当者のパターンと比較
- トップセールスの営業プロセスを分解し、対象者の営業の進め方と比較
- 営業のどの段階で課題が発生しているかを分析
- 初回接触の段階で失注が多い → アプローチの改善が必要
- 商談までは進むが成約率が低い → クロージングの強化が必要
- 営業プロセスに課題を組み込んで改善策を考える
- 例:「ヒアリング力を強化するために、質問リストを作成する」
- 例:「提案の質を上げるために、成功事例のテンプレートを活用する」
4. 営業プロセス実行に必要なスキルを明確化する
作成した営業プロセスを実行するために、不足しているスキルや知識を特定し、それを補うための施策を考えます。
- 営業スキル
- ヒアリング力(クライアントのニーズを深掘りするスキル)
- クロージング力(商談を成約につなげるスキル)
- 交渉力(単価交渉や条件調整をスムーズに行うスキル)
- 業界知識
- SES業界の仕組み(エンジニアの契約形態、単価設定の考え方)
- ITスキルの知識(基本的なプログラミング言語、インフラ知識)
5. 育成プロセスを設計する
4で明確になった必要なスキルや知識を、どのように習得していくかを具体的に計画します。
- OJT
- 先輩営業と同行し、リアルな商談の流れを学ぶ
- ロールプレイングを実施し、商談の練習をする
- 研修の導入
- 営業トークや交渉術を学ぶための外部研修を活用
- 勉強会を定期開催し、業界知識を強化
- サポートツールの活用
- マッチングツールを活用し、データにに基づいた人材選定をする
- 営業資料のテンプレートを作成し、提案書の質を統一
営業人材育成の鍵は仕組み化とサポート体制の強化
営業人材の育成には、明確な目標設定と計画的なスキル強化が欠かせません。成功している営業担当者のパターンを分析し、営業プロセスを標準化することで、組織全体の成果を底上げできます。また、SFA/CRMやマッチングツールを活用し、データに基づいた効率的な営業活動を推進することも重要です。
最近ではAIを活用してメール文面や提案書の構成を考えたりと、時間がかかりやすい作業も短縮できるようになってきてます。
さらに、OJTや研修などの育成プロセスを整え、公平な評価制度と相談しやすい職場環境を構築することで、営業担当者の成長を支援できます。個々のスキル向上と組織全体の仕組み強化を両立させることで、持続的な成果を生み出す営業チームを実現しましょう。
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